
10月27日、日経平均株価が初めて5万円を超えました。不思議なことに、日本人の生活は貧しくなっています。このギャップは何なのでしょうか。証券会社の人たちが沸き立つのはいいでしょう。でも、大手メディアがにぎわいだけを報じるのは本質からズレていると感じます。
2003年。日経平均はバブル崩壊後、初めて8000円を割り込みました。2008年10月にはリーマンショックの流れから7000円を下回ります。株価が歴史的な下落を記録し、悲観論が広がっていましたが、当時、取材した企業人や官僚たち、そして私も、日本は何とかなるという自信を持っていました。
しかし、いまや日本の衰退は止まる気配がありません。日本の途上国化が進んでいると指摘するエコノミストも出てきました。日経平均5万円は、実体経済とかけ離れています。
主食のコメの値段が下がるという期待は裏切られたままです。スーパーに行って、カゴに入れた食料をレジに通すと、一瞬ためらいます。明らかに支払い額が高くなっています。給料が大きく減った私も、生活が厳しいと実感しています。インフレが進み、高所得の人たちとの格差も広がっています。
円安が、食料高騰をはじめ、マイナスの影響を多方面に及ぼしています。「責任ある積極財政の考え方の下、戦略的に財政出動を行う」。高市早苗首相は所信表明でこう強調しました。「高市政権が赤字国債発行で、お札をどんどん刷れば円はもっと下落する」。知人の元銀行員はこう解説します。
積極財政で赤字国債を大量発行すれば、円の価値が下がり、生活を厳しくするリスクになるという指摘です。財政悪化が進み、日本国債が格下げされれば、国民はさらに厳しい状況になります。
必要なのは物価高対策ではありません。円の暴落、日本売りを反転させる次元の違う経済の基盤強化です。小さい思考を格段に大きくする転換が急務でしょう。政治家も、官僚も、経営者も、メディアも・・・。日本人は本質を見失っていないでしょうか。