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【疑う力・創る力】(岡田 豊)「外国人は日本にいらない…」本質から目をそむける空気感

「外国人が歩いているだけで怖い。外国人は日本にいらない」。私の知人の知り合いが、参院選後に、SNSにこんな投稿をしました。やるせない言葉が、割と身近な人から吐かれたことに驚きました。貧困、格差拡大、生活苦、自己利益優先、フェイクの氾濫…。こうした負の空気が日本社会に広がりつつあるからでしょうか。そんな息苦しさ、苦しさの矛先が、スケープゴートに向けられているのでしょうか。
 
 誰かに刃を向けるような、とがった言葉は、やがてブーメランとなって、自分に返ってくることがあります。短絡的、近視眼的、感情的…。こうした空気感は、日本のみならず、世界各国で広がりつつあるのかもしれません。
 
 7月の参院選は、実に残念な国政選挙でした。大勢の候補者が物価高対策を訴え、減税、給付金を訴えました。確かに、日本人は貧しくなっています。生活が追いつめられた国民にとっては、すぐにでも支援が必要です。しかし、目先の支援の一方で、衰退が加速する日本経済の構造を根本から抜本的に強化、拡充するという本気の政策や言葉が、ほとんど聞かれませんでした。ポピュリズムのオンパレードだったという印象です。

 国の衰退が加速し、途上国化が進んでいるとさえ言われる今、本当の危機を直視せず、小手先の安易な政策論に終始した参院選。日本人が本質から目を背けているという傾向が見て取れました。
 
 「まず、手取りを増やす」。参院選で当選したある候補者がこう言いました。手取りを増やすことは、間違った政策ではないと思います。でも、本質を見いだし、本質を語るのが国会議員の使命なのではないでしょうか。「物価が高いというよりも、通貨円が格段に弱くなっている。要は、物事をどっち側から見るかということだ」。知人の元銀行員が、私にこう言います。その通りだと思いました。円安が進んだから、日本が輸入する物の価格が押し上げられている。円安のままでよいのか、しっかり議論すべきだという指摘です。
 
 参院選で「日本人ファースト」「反グローバリズム」を掲げた党が、議席を大きく伸ばしました。「外国人は要らない」という言葉と重なる現象です。しかし、こうした排外主義は、やがて日本を追い詰めてしまうことになりかねません。例えば、「アメリカ・ファースト」のトランプ大統領に、日本も随分と振り回されています。しかし、排外や報復という姿勢で対峙するのではなく、相手を理解し、相手の本音に踏み込んで、双方の利益を導き出す本質的な知恵が求められているのだろうと思います。

 日本人は、柔らかい発想とバランス感覚が比較的あると私は感じています。国際社会の中で賢く立ち回り、さらには、国際社会を大きく俯瞰する本質的な視座が求められているのではないでしょうか。あちらこちらで壊れ始めた国際秩序を新たに再構築すべく、日本人が存在感を示す時が来たのだろうと考えています。(2025年7月)


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