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【疑う力・創る力】(岡田 豊)アメリカは二流国になったのか トランプ関税という愚策

アメリカのトランプ大統領が繰り出した全世界を対象とする関税政策は、世紀の愚策になるかもしれません。4月2日。トランプ氏の「相互関税」は各国に一律10%の関税を課し、さらに国・地域ごとに異なる税率を上乗せしました。その税率の積算根拠は不透明、不条理、不合理であり、今のところ、大国の責任感を棚上げした杜撰な政策と言わざるを得ません。世界の自由貿易を牽引してきたアメリカの豹変。アメリカは今、二流国への道を歩んでいるのではないかと疑い始めています。
 
「長年、わが国は他国に略奪されてきた」「今日は長い間待ち望んでいた『解放の日』だ。2025年4月2日は、アメリカの産業が生まれ変わった日、アメリカの命運が取り戻された日、アメリカが再び豊かさを取り戻した日として永遠に記憶されるだろう」。この日、トランプ大統領が演説で語った言葉には、巨額の貿易赤字と財政赤字を減らそうという決意を逸脱した違和感がありました。世界経済の盟主だったアメリカのリーダーの言葉とは思えません。
 
関税を操作し、他国を威嚇し、自国ファースト、自分ファーストの道を行くトランプ氏。心配なのは、アメリカ経済やアメリカ国民です。この分厚い関税に保護されてしまうアメリカの企業や産業が今後、努力や工夫の手を抜き、競争力を失い、退化してしまわないかということです。「アメリカには輸入品に代わる生産力はなく、インフレをもたらすのみ。経済的に圧倒的な愚策だ」。日本の外交関係者はこう指摘します。
 
トランプ関税は、アメリカが牽引してきた自由貿易体制を自ら崩しました。世界秩序は大きく変容するでしょう。「1930年代に蔓延した保護主義が第二次世界大戦の一因となったとの反省から、多国間の貿易自由化を目指し、1948年に、最恵国待遇(GATT第1条)・内国民待遇(同第3条)を大原則とするGATT(関税及び貿易に関する一般協定)が発効した」。経済産業省の『通商白書2019』には、こう記述されています。戦後、国際社会が自由貿易を発展させてきた契機には、第二次世界大戦の教訓があったのです。
 
「ここ数日、よく眠れない」。こう漏らすのはアメリカ勤務が長かった知人です。アメリカで経済活動する日本企業を後押ししてきた知人は、親しいアメリカ人も多く、アメリカをいわば愛してきました。彼が憂えているのは最悪の事態です。「世界が戦争前夜を迎えようとしているのではないか」。トランプ関税が、やがて本物の戦争の引き金になりかねないという懸念です。これが杞憂に終わってほしいと切に願います。
 
ここで気になるのは、「相互関税」の上乗せリストに、ロシアが入っていない点です。トランプ政権のベッセント財務長官は、アメリカとロシアの間に実質的に貿易取引がないことや、ロシアが制裁を受けていることを理由に挙げました。ただ、トランプ氏は、ウクライナとの停戦協議でロシア寄りの立場を取っています。何か別の思惑があるのでしょうか。どこか腑に落ちません。
 
「緊密な同盟国」のはずの日本に対する関税率は24%と高水準です。「対抗措置の検討を」。日本ではこんな声が野党などから早速出ています。しかし、「目には目を」は、往々にして良い結果をもたらしません。世界中が感情的に報復に走るようでは、それこそ、何かの、誰かの、思うつぼになってしまいます。引いた目で、視野を広く、むしろ調整役、調和に動く役を買って出るのが、日本人ならではの選択肢かもしれないと思うのです。(2025年4月)

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